博士課程審査終了

本当に久々の更新になります.お久しぶりですがご報告です.

これまで約3年間をかけて取り組んできた博士課程の研究がまとまり,大学で学位の審査が合格となりました.自分は課程内博士という一般的な学生の身分で課程を進めてきたので,学位授与式というのが9月に行われて正式な修了となるのですが,この審査をもって学生としてやるべき事はほぼ終わったということになります.

始めた頃は2012年の9月で34歳,3年経てば当然37歳.3年という月日は振り返れば長いですが,いつの間にか過ぎていき,とても楽しい月日でした.時にはこんな歳になって仕事もせず,完璧なる学生なんかしていて人間としてどうなんだろうかとか,学生の身分に比べて会社員の身分保障システムというのは素晴らしいものだったんだなぁとか,隣の芝が大いに青く見えることも沢山ありました.でも,あえて人とちょっと変わった道を歩むことで,色々と面白い経験ができたと思います.心おきなくやりたいことをやったので,これからは自分のためばかりでなく,誰かのために自分の時間を使おうと思えるようにもなってきました.

34と37ではだいぶ年齢に対する印象が変わります.最近は40代が目の前に見えてきたなぁと感じることが多くなってきました.やはり,大学に行く年齢としてはギリギリだったかなと思います.結婚して子供もできてという,さらなる人生の展開を考えたとき,これ以上遅くなっていたら結構しんどかったと思います.一方,仕事に関して言えば35歳の転職限界説なんてものも聞きましたけど,どうなんでしょうか.個人的には,自分の持っている技術がちゃんと世の中のニーズを満たしていれば,最近は仕事探しをするということに関しては年齢が制約になるというのはあまりないのかなという印象を受けます.仕事云々より,体力的なこととか,生物としての色々なタイムリミットを意識するようになることの方が大きいかなと思います.

この3年間を通じて学んだことが何かと言えば,それは研究者として生活するための作法かと思います.論文の探し方,読み方,書き方,研究テーマの決め方,実験の進め方,まとめ方,といった研究者としての日々のルーチンワーク的な立ち振る舞いを身につけることができました.今までは我流でやっていたことが,なんとなく標準的な姿になったように思います.また,論文がリジェクトされるという経験を通じてアカデミアの厳しさや,あまり美しくない世界も垣間見ることができました.論文がリジェクトされるというのは本当に心臓に悪いです.相当な時間をかけて準備をし,査読も待っていたものが一瞬にして暗転するのですから,特にタイムリミットを意識して研究しているような自分にはたまったものではありませんでした.

かつて,仕事を辞めて学生になると宣言したとき,社会人ドクターという選択肢を取らないのかということをよくアドバイスされました.しかし,個人的にはやはり課程内ドクターで良かったと思っています.もちろん,条件として単身者であって家庭的な責任がないとか,年齢的にも時間に余裕があるということがなければ,必然的に社会人ドクターしか選択肢がなくなってしまうのかもしれません.しかし,研究の充実度や一貫性,研究遂行の効率性を考えたら課程内ドクターの方が大いに有利だろうと思います.

博士課程を経て,今は昔とは違う会社に勤務しているわけですが,個人的な印象として,日本はもっと社会人の流動性を持たせてもいいのかなと感じています.社会人から博士課程に行ったり,転職組を自然に受け入れる文化を会社に持たせるということです.会社を変えると,前の会社,今の会社,それぞれのいい点や悪い点がよく見えてきます.広い視点で自分の今いる環境を客観的に眺めるというのは,なかなか面白い経験だと思います.自分の立場がにっちもさっちもいかなくなってから転職を模索するというよりは,もっと新しい環境を見てみたいとか,もっと別の仕事を経験してみたいとか,前向きな気持ちで人々が積極的に自分の可能性を探索できる社会であってもいいのかなと思います.

さて,残り2ヶ月となってしまった学生生活,大いに名残惜しいです.若く純真な学生たちと日々共に研究し,コミュニケーションするのは本当に楽しくて仕方なかったです.しかし,いつまでもモラトリアムを続けるわけにもいかないわけです.一緒に研究を始めた学生たちも当然研究室を経て卒業し,社会人となっていくわけで,まあ,これは定めなわけです.いつまでも卒業できずに研究室に住み着いて長老扱いされるようになるよりは,スッキリと風のように吹き抜ける存在の方が爽やかでいいかなと...

というわけで,自分はもう十分に満喫しました.これからは,次世代が自分と同じような気持ちを経験できるようにするために,大いに貢献していこうと思います.

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